このシリーズでは、介護福祉士国家試験の過去問を1問ずつ、やさしい日本語で解説しています。
今日は第38回の問題8です。
テーマは「生活史を尊重した声かけ」です。長く一人で暮らしてきた高齢者に、これからのことをどう伝えるか。とても大切な場面ですね。一緒に見ていきましょう。
Aパート
科目:介護の基本
【問題8】
Aさん(91歳、女性、要支援2)は、長年診療所の医師として地域医療に貢献してきた。婚姻歴はなく、診療所敷地内の自宅で3匹の猫と暮らしている。
85歳で医師を引退した後も、近隣にはAさんを慕う地域住民が多く、定期的に、「先生、元気にしてますか」とAさんの自宅を訪ねている。
Aさんは昨年から歩行の不安を訴え、現在は地域住民の見守りのほか、訪問型サービスを週2回利用している。人の世話になることに慣れていない様子もあるが、最期まで自宅で暮らすことを望んでいる。
次の記述のうち、Aさんの生活史を尊重した訪問介護員(ホームヘルパー)の声かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
「3匹の猫は、今後は地域の皆さんに預けましょう」
「近所の方の力も借りて、この地域で暮らしていけるように考えていきましょう」
「介護を受けることにも、今後は慣れてください」
「医師であったことは忘れて、私たちを頼ってください」
「一人暮らしで自宅で最期を迎えるのは、不安がありますよね」
『生活史』
その人がこれまでどんな仕事をして、どんな生活を送ってきたか、という人生の歩みのことです。
『尊重』
相手の考え方や生き方を大切にすることです。
『婚姻歴』
結婚したことがあるかどうかという経歴のことです。
『貢献』
何かの役に立つように力をつくすことです。
『訪問型サービス』
ヘルパーなどが利用者の自宅を訪ねて行う支援のことです。
「近所の方の力も借りて、この地域で暮らしていけるように考えていきましょう」
Aさんは、長年医師として地域の人たちに頼られてきた人です。今も近所の人たちが心配して訪ねてくるほど、地域とのつながりが深いことがわかります。そして、Aさん自身も「最期まで自宅で暮らしたい」と言っています。
この気持ちを大切にするなら、Aさんがこれまで作ってきた地域とのつながりを使って、近所の人たちに手伝ってもらいながら、これからも自宅で暮らし続けられる方法を一緒に考える、という声かけが合っています。だから正解は2です。
「3匹の猫は、今後は地域の皆さんに預けましょう」
Aさんが大切にしてきた猫との暮らしを、Aさんに相談もせずに手放す前提で話しています。Aさんの気持ちを尊重した対応ではありません。
「介護を受けることにも、今後は慣れてください」
「人の世話になることに慣れていない」というAさんの気持ちに寄り添っておらず、押しつけるような言い方になっています。
「医師であったことは忘れて、私たちを頼ってください」
医師として働いてきたことは、Aさんの人生そのものです。それを「忘れて」と言うのは、Aさんのこれまでの役割や生き方を否定することになってしまいます。
「一人暮らしで自宅で最期を迎えるのは、不安がありますよね」
Aさん本人がまだ「不安だ」とは言っていないのに、こちらから決めつけて言葉にしてしまっています。本人の気持ちを丁寧に受け止める声かけとは言えません。
利用者の「これまでの人生」を知ることは、これからの支援を考えるときにとても大切です。仕事や役割、大切にしてきたもの(今回でいう猫や地域とのつながり)を考えながら、本人が望む暮らしを一緒に作っていく姿勢が、生活史を大切にした支援につながります。
次回は、第38回の問題9を解説します。介護保険制度における一人暮らしの要支援者を支えるサービスについての問題です。お楽しみに。
※この記事は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公開している過去問をもとに作成しています。

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